経営

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佐々木淳

代表取締役CEO 佐々木淳

「人類を未来に到達させる」方法を考える
会社のトップが考えていること。

「ITをもっとわかりやすく」という当たり前の価値観をとことん浸透させていく

── まずは事業内容をご説明いただけますか?

佐々木:宜しくお願いします。弊社のやっている事業は大きく二つあります。まず一つは伴走型DX支援事業と言いまして、顧客の組織や事業の課題に応じて、いわゆるコンサルタントやデータサイエンティスト、エンジニアがチームになってワンストップでアジャイル開発支援をやっています。

もう一つは、より具体的にデジタル化や、データ活用支援のご提供をするサービスを複数取り揃えています。例えばデータキャピタルというデータマーケティングの領域でのサービスや、短期間でPMFするためのシステムテンプレートサービスの提供などをしています。その他、自治体向けのDXの推進をするサービスなどもあり、お客様の拡張するタイミングで活用支援をするという事業を多岐にわたってやっています。

 

── ありがとうございます。伴走型支援事業をしていく上でのポイントをお教えください。

佐々木:基本的なコンセプトは「ITをもっとわかりやすく」というところです。例えばお客様に対しては、開発の内容でもマーケティングの話でもそうですが、なるべく横文字を使わないようにしています。ITの会社の中にはマウンティングをして上下を作ろうとする人もいると聞きます。横文字ばかり並べて早口でロジカルにプレゼンすると、お客様が圧倒されてしまうとも伺っています。

クライアントは40~60代くらいの社長や役員の方々も多いですし、相手の方にとってわかりやすい言葉を使って、私たちが支援できる部分を見つけていこう。そういう考えからこのコンセプトが生まれました。

 

── 伴走型は従来のものとどう違うのでしょうか?

佐々木:簡単に言うと、お客様の要求仕様を常に変えられる状態にして満足度が高い開発を提供しています。

開発の領域は、その多くがウォーターフォール型開発です。もちろんIT企業のサービスプロダクト内ではアジャイル型開発という手法を取り入れて、例えば1週間でスプリントを切って開発に走っていくのですが、IT業界内では成果物を1週間ごとに出していくのは当たり前です。

一方で、非IT業界ですとクライアントが言っていることの解像度が粗くベンダー側が根負けする構造があります。その結果、言った言わないのトラブルが起きているとも聞きます。海外ではサービスパッケージを中心として、日本で言うところのSaaSが真ん中にあるので、SaaSに付随するような形でオリジナルのシステム開発をするというのが海外のやり方です。しかし日本はオリジナルの開発から入っていくので、認識のズレがものすごいあります。

 

── ゼロからのスタートなので、ゴールの共有がなかなか難しいと。

佐々木:はい。ですので業界の流れとしては工程を決める方向に行きました。要件定義、設計、開発、テスト、リリースという、要件ごとにお客さんの合意形成を取っていくのです。これによってどんな問題が起こるかというと、スピード感が出ないことと、一度決めた仕様を変えられないということです。

非IT業界の企業はこれに苦しめられています。例えば地方のファミリー企業だと、30億や50億、100億くらい発注している企業さんもいると聞きます。どういうことかと言うと、認識の齟齬が起きた場合に開発ベンダー側はお金で調整しているんです。「もうちょっとお金くれたら変えてあげるよ」というスタンスですね。そうすると開発費がどんどん肥大化していって、本来何を目的にしていたのかを見失います。

ビジネスとして売り上げを増やすために開発をしていたのが、開発することそのものに目的が切り替わってしまう、そんな業界です。こうした問題は規模が小さくても起きています。だから私たちは、お客様の要求仕様を常に変えられる状態にして、共に伴走することで満足度が高い開発を提供しています。

 

── あくまでお客様と同じゴールを見据えて、目的をブレさせずに作っていくことを大事にされているのですね。

佐々木:これをIT業界の人に言ったら、「そんなの当たり前だろ」と言われてしまうくらい、至極まっとうなセオリーの話をしています。ただ、2000年代くらいからIT業界が盛り上がってきて、20年間もやってきたのにもかかわらず、そういうことをわかっていない人たちがまだまだ多いのが現状です。そこにメスを入れたいのです。

 

「技術×コンテクスト力」で個性を発揮していく

── なるほど。御社に入って来てほしいエンジニアには、お客様と伴走したい、同じ言葉を使って一緒にビジネスをしていきたいという想いが必要なんでしょうか?

佐々木:そうですね、そういったことに共感してもらえる人に来ていただきたいです。また、私たちは基本的にノーコードで提供していきたいものがいくつもあるので、そのナレッジを知的財産となるように自社に溜めていくことを目的にしてほしいです。

やっぱり開発って属人化しやすいですから、優秀なエンジニアにナレッジが溜まりやすくなります。でも私たちはそういう思想じゃなくて、安い・早い・高品質という3拍子揃った体制にしていきたいんです。そのためエンジニアのキャリアシートを、市場評価もきちんと視野に入れながら、品質を担保するためのチームビルディングをしています。だから、仮に弊社を辞めたとしても「Fabeeeに行った技術者って優秀だよね」と思ってもらえるように、思想や開発の取り組みは意識しています。

 

── 具体的にはどういうことをされていますか?

佐々木:共通の機能を洗い出したり、その機能をみんなでシェアしたりと、誰もがその機能を使える仕組みにするのを自社内で取り組んでいるという形です。

 

── なるほど。御社で仕事をされているエンジニアは、技術力はもとよりコミュニケーション力も求められるのでしょうか?

佐々木:はい。それはCTOの思想で、私も非常に大事にしています。技術も大事ですが、ミスコミュニケーションが起きないようにするとか、これを作ると誰が喜ぶのか、なぜ必要なのか、どういう機能があったらユーザーが本当に喜ぶのかを考える事がもっと重要なのだろうという思想です。私たちは組織としてやる以上、共通認識があるとか、見ている方向性が合致している、といったことを重要視しています。

Fabeeeは、個性や人間性が出やすい会社です。今世界的にも掲げられるテーマであるダイバーシティ、SDGs、ESGといった文脈の中で、コミュニティをどうやってマイクロ化して強固にしていくのかが、社会的にも重要なミッションになっています。そこを意識したチームを作れているのがFabeeeの個性になります。

 

── 事業系の人が技術系の人と対等に会話をするのはやはり難しいのでしょうか?

佐々木:そうですね、やっぱり横文字で会話をするほうが楽ですし、皆そこを変換するのに苦労しているようです。SaaS業界やITベンチャーでは、例えばKPI、KGI、TAM、SAM、MRR、ARRといったキーワードが当たり前のように出てきます。私たちはそういう言葉は一切使いません。

弊社のメンバーの多くは「ITをもっとわかりやすく」というコンセプトに共感してくれていて、「わかりやすく伝えるにはどうすればよいのだろう?」という気持ちを原動力にして、お客さんと向き合っています。

また、私たちはお客さんと向き合う際に重要にしていることが3つあります。

「まずやってみよう精神」「失敗も成功もシェア」「アップデートをやめない」ということを大事にしています。例えばお客様にわかりやすく伝えるための方法を考えるときに、まずはやってみる。そこでもし伝わらなかったら、それを失敗事例としてシェアする。その後にどんな言い方をすればお客さんに納得してもらえるのかと考えてアップデートする。この3つが会社のコンセプトに紐づいているのが、弊社のバリューですね。

 

「マイクロコミュニティ」でつながりを作る

──バリューの浸透度合いについて教えてください。

佐々木:Slackのチャンネルを使ってリモート出社しているのですが、そのときに「おはよう」と挨拶するとともに、前日の出来事やそのときに思ったことなどを話しています。これは別に強制じゃないですし、飽きることもあるので全員が毎日やっているわけではありません。良好な関係を築くには挨拶から始めるのが重要だというデータがあり、それを私たちも取り入れています。

また、弊社では「水曜日のファビタウン」という、ダウンタウンさんの番組をもじった会があります。自分たちでお題を決めて、それに対して社員がみんなでディスカッションして、それをラジオにして流しています。あるチームだと、毎日4時からコーヒーを飲みながら30分間だけ会話をするコーヒーブレイクタイムをやっています。こういったことはよく組織的に取り入れていますね。

 

── お客様と同じ言葉を使って会話ができるのは、チームのコミュニティや組織力がベースにあるのですね。

佐々木:はい。その他にも、私たちは100日オンボーディングというシートを作っています。オンボーディングで入社した人のためのプログラムが3ヶ月間あり、そのときに必ず一人、メンターではなくサポーターをつけるんです。

年齢や社歴は関係なくサポートしてあげられるように、サポーターという名前にしています。メンターだと上位互換になってしまいますからね。その3ヶ月の間で、困ったことがあればそのサポーターに聞いてもらうという。

リモートになって以降は、特につながりを大事にしているんです。コミュニティがマイクロ化されているという話で言えば、社外のコミュニティも大事ですが、社内のコミュニティもマイクロ化だと定義しています。

社員のモチベーションが一番高い時期は、やっぱり入社直後ですよね。「やってやるぞ!」とワクワクして入ってきていますから。そのときのモチベーションカーブの山があって、登りの期間が長ければ長いほどパフォーマンスが高く、停滞して落ちていくと辞めてしまいます。エンジニアは成長したいからいろんな会社を見てみたいものですし、私たちが成長や楽しさを提供できなければ違う会社に行くでしょう。だからワクワクしている期間を長くするためのムーブメントは、積極的に作っています。

 

── コロナ禍の転職はいきなりリモートで、孤独でつらいということを耳にします。御社では3ヶ月間徹底的にサポートがあり、他の方たちともマイクロコミュニティの関係性をどんどん深くしていけるんですね。

佐々木:そうですね。さらには「Quest(クエスト)」という社内副業制度がありまして、社内で他部署の困りごとやリソースが不足していることに協力するとポイントがもらえて、そのポイントを豪華なお食事券などのインセンティブに交換できる仕組みがあります。社内副業を通じて仕事の対価が得られるだけではなく、普段関わりが薄くなりがちな他部署の方とコミュニケーションすることでより深い関係性を築くことができることが狙いです。また、社外での培った経験や人脈を組織に還元をしてほしいと考え、一般的な副業も解禁しています。

 

「オンラインとオフラインの境界線を無くす」とは

── 社内でもプロジェクトを通して繋がりを作り、社外でも副業を通してつながりを作る。個性と人間力をもってつながり合いながら、技術とコミュニケーションを磨いていけるのはとても充実しそうです。もう一つ気になる所として、ビジョンである「オンラインとオフラインの境界線のない世界を実現する」についても同じくコミュニケーションを取り合うのが難しい世界観なのではないでしょうか。お考えをお伺いしたいです。

佐々木:私が昔MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を作ったときに、ミッションとビジョンに魂がこもってなかったなと反省したことがあります。心の奥底から自分がやりたいものは何だろうと考えたときに、目先の見えるところにビジョン設定をしてしまったのが、私の前回の反省点でした。同じ様な話ですが、以前HRtechのある領域でカテゴリシェアナンバーワンという目標を設定したことがありますが、すぐに飽きてしまったんです。

私はなんでもやりたくなってしまう性格なんです。こっちのマーケットが面白そうだなと思ったら、どんどん引きずられてしまいます。社員や幹部陣に「何言っているんだよコイツ」と思われたこともあります。だから誰も越えたことがない、すごく遠いところにビジョンを置こうと考え、「オンラインとオフラインの境界線を無くす」という目標を100年後に達成する前提で設定しました。

これならどの角度からアプローチしたとしてもみんな「このビジョンを達成するためだ」と許容できるようになります。みんなが言っていることも許容できるし、顧客が言っていることも許容できる。じゃあ具体は何なのかというのは社員からも言われますし、まだまだ解像度自体を全社員に伝えられてない事はありますので、色々な機会を通して社員に伝えていきたいです。

「オンラインとオフラインの境界線のない世界を作る」という言葉の解像度を上げるとすれば、「現実経済と仮想経済を行き来することができる経済プラットフォームを作ること」でしょうか。今ある現実の経済圏は何かと言えばまず様々な産業があり、その飛躍的成長をデジタルでサポートをしているというのがまず一つあります。世界的に見ても産業の改革は必然になってきています。併せて、ロシアとウクライナの戦争では寄付が仮想通貨によって行われており、今まで無かったマーケットが許容されています。時代の変化と共にOKになっていますよね。

私が掲げているオンラインとオフラインの未来って、別にイノベーティブなものではありません。訪れるであろう未来に対して、ちゃんとド真ん中に居たいというだけです。だとしたらド真ん中って何だろうと考えたときに、DXを様々な企業に推進していくことが一つです。

最近、仮想経済については解像度が上がってきており、メタバースの取り組みに経済圏を作っていくのはとても重要だと考えています。実は5年前からそういう話をしていて、元々私がスポーツ系のサービスをやっていたときもメタバース的な事をやっていました。空間的距離を無くして、仮想経済で何度でもチャレンジできる社会を作っていきたいと考えているんです。現実経済で頑張っている方と身体的な理由でやりたいことができなかった方が、仮想経済上で交われるようにする等が考えられます。

あるいは現実経済でやっている人たちが、仮想経済に行ったらまた現実経済に戻るという循環サイクルを作ることが、世の中的にすごく正しいことなのではないかと考えています。

 

── 未来は当然そうなるから、真ん中に居続けているという感じですね。

佐々木:そうですね。私もいろいろとやりたいことがありすぎて自問自答している状態ではありますが、開発という観点で言うと将来的には開発費を0円で世の中に提供したいという想いがあります。0円は極端ですが、公共の水道水と同じようにみんなが使えるような世界です。

エンジンがあってそこにアクセスしたら、老若男女誰でもやりたいことをインターネット上でできる。そういった環境を20〜30年後には作っていきたいです。本来は、開発でお金を取ることが目的ではないはずなんです。

というのも「民間でビジネスをやっている企業は、ちゃんとしたビジネスをしましょうよ」と考えています。例えばシステム開発でバグが起きたことにお金を費やすのは、ビジネスにお金を使っているとは言えません。理想を言えば、「そのシステム自体はもう前提として完成されているから、そもそも会話にすら入ってこない」という状態が望ましいです。そのためには、生きて行くために必要なインフラであるということが認知されなければいけません。ただ、地方の会社で高齢の社長さんは「別にうちにはいらないよ」と言っているけど、若手は気づいていて一生懸命社長に説明しているといったケースもあります。わかっていただくためのサポートというのもしなければいけないと思っています。

 

 

未来を楽しむ。ギャップを楽しむ。

── どんな人と一緒に働きたい、どんな人に来てほしいという想いはありますか?

佐々木:私たちもまだまだではありますが、ベンチャーマインドは忘れずに大切にしています。重要なのは私たちのバリューに共感できる事と、強い当事者意識をお持ちの方と一緒にお仕事したいというのが大前提にあります。「この企業やサービスは、自分たちが変えてあげないと!」という想いで自発的に行動していくことが一番大事だと思っています。また、先程マイクロコミュニティという言い方をしましたが、それが駆動していくことでお客さんも前進していくと考えています。

また、ベンチャー企業にいると、楽しいこともありますが辛いとか苦しいと感じることの方が多いかもしれません。大企業だったら高い年収をもらえて、17時に上がって、そのあとは自分の趣味や副業にいそしむなど、楽しさに軸を置いて仕事が出来る可能性があります。他方、ベンチャーでは「何があってもやり切ること」や「明日に持ち越さない」といったことが重要になってきます。あるいは、ベンチャーらしさで言うと根拠のない自信を持って「俺らはやれるぞ!」と走っていけることが重要です。ここはもはやロジックで語れないんですよね。「自分を信じる」なので、論理的ではないし、根拠なんてないという話です。

また、私が描いている未来を、信じるというよりは共感してくれる人だと良いですね。

「オンラインとオフライン? オンラインってどこまででしたっけ?」「境界線の定義とは!?」みたいなことでなく、抽象度が高いゴールに対して考えて行動していくことを楽しめることがポイントですね。

 

── Fabeeeのビジョンに共感して、圧倒的な未来志向で生きているからこそ、今やっていることがスッと入ってくる。そういう方が一緒に働いているんですね。

佐々木:はい。もちろん泥臭い部分もあります。開発でどうしても顧客がやりたいことを受け入れていかなきゃいけないこともあります。単純にイノベーションの提案をする側面もあれば、普通に開発をしなきゃいけないこともあったりします。

未来志向だとギャップが出るのはつきものです。だけど、今やっていることが何かに繋がって「次のフェイズでこういう提案したら面白そうだよね」と自分で思考を切り替えられる人は、弊社では結構活躍しています。

これはスキルの有無は関係のないことです。未経験でエンジニアとして入った女性もいますが、今はめちゃくちゃワークしていて、「ソースコードが私の養分です」と言って会社や未来が良くなるようなことを徹底的に行動してくれています。弊社は未経験の採用フローが特殊で、「あなたが考える四次元とはなんですか」という質問があります。普通の真面目な人はドラえもんのポケットとかを描いてくるのですが、その女性はまったく脈絡がないけれど論理的な絵を描いてきました。これは化けるなと思って採用したらすぐワークしてくれましたね。

 

──今すぐに実現可能でないからこそ、思考が広く飛んで面白い。その感覚をみんなでシェアし合っているんでしょうか

佐々木:そうですね。というのももう世の中に新しいビジネスってあんまりないんですよ。同じようなサービスはみんなどこかで一度は考えているんです。だから「楽しいから」「このメンバーだから」「この環境だから」などが大事だなと思っています。人生何十年も仕事するのだから、そこに楽しみを見出して没頭するのが働くということの本質じゃないかと考えています。

 

── Fabeeeにとっては未来世界をシェアし合うことが働く楽しさの根源にある様に聞こえます。

佐々木:すごく近いと思いますね。遠い未来なので楽しめるでしょうという感覚はあります。この未来は絶対に訪れる未来なので、私がトップに居なくてもそれがずっと続いているなら構わないとも思いますね。この仕組みで全員がワークしていて、新しい人も入って事業が伸びたら、それで満足です。

今、DXをやりますと言っている企業が非常に多いので他の会社と同じように見られがちなんですが、この方向性がわかってくれる方に出会いたいです。やっぱり私たちの思想や、目指しているところに共感してくれる優秀な方が、弊社に入っていただけるなら嬉しいです。

── 本日はありがとうございました。

佐々木:ありがとうございました。

(インタビュー/文:加美 雪絵/Shovell編集)

 

 

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